国立研究開発法人・医薬基盤・健康・栄養研究所主催、内閣府後援による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「包摂的コミュニティプラットフォームの構築」シンポジウム2024が2月4日、都内のシティホール&ギャラリー五反田を会場にハイブリッド開催されました。
開会挨拶で登壇した内閣府SIPプログラムディレクターを務める筑波大学大学院の久野譜也教授は、「包摂的コミュニティプラットフォーム開発の2年目の現状と今後の方向性」について述べました。
同プロジェクトでは、「社会の寛容性向上策(コミュニティ再生)」「個人の自律性向上策」「子育て世代・女性の幸福度向上策」「障がい者・高齢者の生きがい向上策」のサブ課題が稼働。うち、「社会の寛容性向上策(コミュニティ再生)」においては、評価の仕組みが不十分として、今年度は科学的に検証の上、「自律性」「寛容性」「つながりと参加」「過ごしやすさ」などの7つの要素を抽出したと報告しました。
高齢者の生きがいを生む外出や社会参加の促進においては、バス停や駅までの数百メートルの移動手段の確保が課題となっていることから、2人乗りの低速モビリティを多摩市に試験的に導入し、実証を行うと説明しました。また、増加する認知症高齢者のトラブルが金融機関における大きな課題となっていることを受け、「福祉×金融」の連携により、認知症が疑われる高齢者の情報を金融機関から自治体・福祉機関に共有できるようにするモデル実証についても解説しました。

さらに、ママ支援のための運動・交流・相談を一体的に提供するオンサイト&オンラインの「マムアップパーク」の取り組みでは、育児や家事に追われていたママが「笑えるようになった」「一緒に参加するほかの子の成長が楽しめるように心に余裕が持てるようになった」といった質的な変化を見せるようになったといった手応えを披露しました。さらに、女性の健康課題に伴う労働生産性喪失額が3.4兆円に上るという試算を紹介し、その解消に向け、武蔵野銀行や城南信用金庫といった金融機関を介し、取引先である中小企業等に対策を提供するモデル事業について説明し、成果等を夏頃に公表できるとの見通しを語りました。
成果の一端を披露しつつ、「アカデミアでは論文を重視しがちだが、SIPのアウトカムはあくまでも社会実装」と強調。「一緒に取り組みたいという自治体や企業等があれば是非、声をかけてほしい」と500人超の傍聴者に呼びかけました。
一方、シンポジウム「女性が活躍する社会を実現するための技術とサービス展開」では、弊社副社長の塚尾が「女性が持つリアルな健康課題に対する伴走型支援サービスに求められるもの」と題し、「マムアップパーク」の狙いや成果について報告しました。
具体的には、妊産婦の7割が運動不足である上、妊娠中の運動が有益であることを知らない妊産婦が8割もいるわが国では、「Exercise is Medicine!」と妊産婦の身体活動が推奨されている欧米と対象的に運動実施等の環境整備が不十分とし、DXを活用したハイブリッド伴走型支援の「マムアップパーク」を開発したと説明。その質的な評価を行った結果、出産後に健康度が低下し、強い不定愁訴や孤独感等を抱えたママが参加したところ、「ずっと怒っていたが、笑えるようになった」「はじめて外出しようと思った」などと心身の健康が改善し、孤独感の低減と運動への意識向上が図られて自律性が向上し、「自分の子どもだけでなく、ほかの子ども成長ぶりも嬉しく感じられる」ようになり、コミュニティの醸成にも寄与したと成果の一端を紹介しました
講演をおこなうプログラムディレクターの久野教授 シンポジストとして成果報告する弊社副社長の塚尾